月に一度、能登の外に能登の今を届けるオンライン報告会、『シン・いやさか会議』を開催しています。
今回は、テーマを『能登町の今』とし、能登町で活動するプレイヤーの皆様にご登壇いただきました。
【登壇者】
森進之介さん(能登町定住促進協議会)
辻野実さん(株式会社SCARAMANGA)
水上志都さん(奥能登じろんどん)
能登町の「今」と「暮らし」の再建
能登半島地震の発生は、2024年1月1日でした。 森さんからは、震災から約1年10ヶ月が経過し、「生活はとりあえずできるようになった」ものの、「能登らしい暮らし」を取り戻せているかというと、まだ課題があるとの認識が示されました。
集落の現状と課題
・能登は細かく分けると15のエリアがあり、その大半が被災。
・災害ボランティアセンターは閉鎖に向かっているが、これは人手ではなく重機が必要な作業が多くなったため。
・奥能登の集落(海側は祭礼、山側は農山との暮らし)の「リズム」を取り戻すための人手が圧倒的に不足。
・震災前、特にコロナ前の暮らしを、今残っている住民だけで維持するのは非常に困難な状況。
・「生活」と「暮らし」は異なり、能登では「集落単位のつながりやコミュニティ」が暮らしの核となっている。
・「集落再建支援」という概念の欠如:震災後の公的な支援や炊き出し・サロン活動などが「個人」向けに限定されており、お裾分け文化を持つ能登の住民には、「お返しができない」ストレスが生じ、「支援を受け付けない」というエラーにつながっているのではないか
独自の活動と原動力
地元に残って活動を続ける登壇者たちは、「自分が元気だったから」「余計な不安を考えずに済んだ」という理由で、周囲のために行動し続けてきたと語りました。
辻野さんの活動:デザインとコミュニティの力
・デザイン会社を経営しつつ、「NOTONOWILDプロジェクト」(能登の誇りを取り戻す)や「DOYA COFFEE」(地域のコミュニティカフェ)を震災前から展開。
・震災直後は、構築していた出身者のネットワークを活かし、物資や資金(グッズ販売によるフェアなトレード)を迅速に集め、SNSを使えない高齢者などにも滞りなく情報を伝達。
・今後は、コミュニティハウス「みんなのバン屋」の建設(来年7月オープン予定)や、「創造的復興」を語る場として、友人宅の蔵を改装したクラブでのイベント開催(12月6日)などを企画。
水上さんの活動:宿泊業と不動産の課題解決
・能登の宿観光防災ラボを設立し、宿泊事業者が生業を続けていくための観光客誘致と、災害時の宿泊客への対応ガイドライン作成に取り組む。
・のと不動産のサポート:震災後、社員2名で対応しきれないほどの問い合わせが殺到したのと不動産で、アルバイトとして電話番などを担当。
・法制度の改善に貢献:仮設住宅の入居期限が「持ち家の人:2年間」「借家の人:1年間」という格差があった点について、著名な専門家に相談し、内閣府での検討を経て両者とも2年間に延長されるという成果に繋がった。
復興に向けた最大の課題
参加者を含め、多くの人が最大の課題として挙げたのは、「住まい」でした。
・震災を機に、不安を抱える子育て世帯などが地元での新築より金沢での購入を選ぶ状況。
・「戻りたい」という気持ちがあっても、一時的に暮らせる賃貸住宅(アパートなど奥能登になかった概念)や、新築・購入以外の選択肢となる「箱」が不足している。
・「そこにいたいのにいられない」という状況は、子どもの教育や集落の維持に深刻な影響を与えている。
・大工不足も深刻で、修繕が必要な家があっても手が回らない。
登壇者・参加者からは、目先の復興だけでなく、「今の中高生たちが悲観しないこと」、「避難した方が戻ってこられる」ための住居確保と、能登の外から訪れる「本当の関係人口」の創出が重要であるという強いメッセージが共有されました。
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次回のお知らせ
次回は、「輪島の今」 をテーマに開催いたします。
開催日:11月27日(木)19:00〜20:00
詳細・お申し込みは、後日公開いたします。
